フォトニック結晶とは?

フォトニック結晶とは、屈折率の異なる材料が周期的に並んだ構造体を指す言葉です。 例えばテレビ画面やメガネの反射防止膜などに広く利用されている光学多層膜も、1次元のフォトニック結晶といえます。しかし一般的には、2次元や3次元の周期構造体を指して、フォトニック結晶とよびます。 構造の周期は通常、使用する光の波長の半分程度に設計されます。例えば可視光領域で利用される フォトニック結晶は、周期が300nm程度になるように設計・作製されます。

光学多層膜と同様に、フォトニック結晶も主に光の透過/反射/屈折特性を制御する目的で使わます。通常の(1次元の)光学多層膜ではこうした特性は厚さ方向に伝わる光に対してのみ得られますが、 2次元や3次元のフォトニック結晶では様々な方向から入射する光を制御することが出来るようになるのです。 また、フォトニック結晶を用いると、従来の光学材料では実現不可能な、様々な不思議な現象が見られることも知られています。

様々なフォトニック結晶

上述のように、2種類以上の光学材料(もしくは1種類の材料と空気)が周期的に配置されていれば フォトニック結晶といえます。1次元の周期構造は異なる材料を順に成膜することにより容易に作製することが出来ます。 しかしながら、2次元や3次元のフォトニック結晶を作ることはとても難しく、これまでに様々な構造と作製方法が提案されてきました。

ウッドパイル型フォトニック結晶は、最初に提唱された3次元フォトニック結晶の一つです。井桁のように 光学材料を積み上げた構造が名前の由来です。複雑な半導体プロセスを繰り返して一層ずつ積み上げてゆく製造工程が必要です。 オパール型フォトニック結晶は、ビーズが積み重なった構造をしています。 液中に光学材料の粒を自然放置して作製するなどの手法がありますが、とても時間が掛かります。 当社の自己クローニング型フォトニック結晶は、凹凸のある多層膜で構成されており、 通常のスパッタリング成膜機を用いて作製することができ、量産技術の確立した唯一の多次元フォトニック結晶であるといえます。

フォトニック結晶の本質

フォトニック結晶で起きる現象の本質は、光の波と周期構造との相互作用にあります。 その最もよく知られた例が、光学多層膜におけるブラッグ反射です。 下の図に示したように、各層からの反射光が強め合う周期構造のときに全反射になる現象です。

このような周期構造とそこを伝わる波との相互作用に関しては、原子の周期構造中を伝わる電子(の波)に関する研究が先行し、バンド理論として確立されています。 これと全く同じ議論が、フォトニック結晶と光との相互作用に適用することができるのです。そうしたアナロジーから、フォトニック結晶の周期構造を『結晶』と呼んでいますが、 原子の周期構造がオングストローム(A=0.1nm)単位であるのに比べて、 フォトニック結晶は数100nm程度と遥かに大きな周期的な構造を人工材料です。 また、伝導帯を指すバンドと同様に、光が透過する波長帯域を『フォトニックバンド』と、遮断される波長帯域を『フォトニックバンドギャップ』と呼びます。

フォトニック結晶で実現される機能

フォトニック結晶では、通常の光学材料では実現不可能な奇妙な振る舞いが見られます。 例えば、負の屈折現象や異常分散などと呼ばれる現象です(下図参照)。 これは、光の透過できる波長帯域(フォトニックバンド)と反射される波長帯域(フォトニックバンドギャップ)の境界付近の波長で見られる現象で、きわめて限定された条件下で実現することができるのです。 このような境界領域での奇妙な振る舞いを制御する技術を、フォトニックバンド端エンジニアリングと呼ぶこともあります。 また、近年のフォトニック結晶研究の多くは、光の通り道(導波路)をフォトニック結晶で作る研究です。 フォトニック結晶を用いることで、より小さな曲率半径で曲げても低損失な導波路を実現することができ、微細な光回路の実現には欠かせない技術と期待されています(下図右)。

こうした研究における主題は、現象の解明・制御とともに製造方法の困難さの克服でありました。 1次元周期の光学多層膜はあらゆる光学部品で採用されていますが、2次元以上のフォトニック結晶は極めて高い製造技術が要求される為に、これまでほとんど市場投入されることがありませんでした。 一方当社は自己クローニング法の開発により、いち早くフォトニック結晶の量産技術を確立しました。 そこで私たちは、更に高度な製造技術の確立や現象制御を目指すよりも、自己クローニングフォトニック結晶の現在の実力に適した市場を模索したのです。
フォトニック結晶をいち早く実社会に役立てる方策を見出そう』、それが私たちの基本スタンスです。