自己クローニング技術とは?

凹凸のある多層膜、これが自己クローニングフォトニック結晶の基本構造です。 あらかじめ凹凸パターンを形成した基板に、多層膜をスパッタリング成膜することで作製されます。 この凹凸形状が通常の(平坦な)多層膜では得られないユニークな光学特性の源になります。ところが、 こうした形状を得ることは簡単ではありません。凹凸基板に通常のスパッタリング成膜しても、 数層成膜する間に最表面形状はみるみる平坦化して凹凸が消失してしまいます(下図右)。 そうならないように工夫した成膜技術が、自己クローニング技術なのです。 そのメカニズムを、簡単にご紹介します。

成膜の過程では凹凸形状は必ず角が丸くなってゆきます。これが進行しすぎると最表面が平坦になってしまうのです。 一方で(ドライ)エッチングをすると、三角波形状は尖る傾向があるのです。 つまり、成膜粒子を積む工程(スパッタリング)と、削る工程(エッチング)とは、表面形状にも相反する振る舞いをするのですが、 エッチングの工程の方が僅かな削り量で急激な形状変化を引き起こします。ですから、全体としては成膜粒子を積み上げながら 形状を一定に保つことが可能になるのです。

こうした巧妙なプロセスを経る過程で、凹凸形状は自然に安定な三角波形状になり、何百層でも同じ形状で積層できるようになるのです。 自己クローニング法による、フォトニック結晶の設計・製造・応用製品などに関する網羅的な特許を当社は保有しており、 国内外の出願特許件数は100件以上に上ります。(2013/6時点)

得られる機能

自己クローニングフォトニック結晶は、 基板パターンの2次元周期構造+膜厚方向の周期方向で合わせて3次元の周期構造体を作製することができます。 しかし、私たちは3次元周期構造よりも、2次元構造で得られる異方性(方向によって光学特性が異なること)に、より大きな魅力を見出しました。 2次元の自己クローニングフォトニック結晶は、異方性光学多層膜として機能し、 偏光子や波長板などの馴染みのある機能を光学多層膜により実現することができるのです。
設計の自由度は、材料の選定・基板の凹凸パターン・多層膜の厚さの3つであり、 これらの選定により偏光子や波長板として機能する素子を作り分けることが出来ます。 また、例えば偏光子の消光比を高めたい場合には、積層数の増加により実現できます。 波長板の場合には、膜厚を微調整することでリタデーションの正確なあわせ込みも可能です。 基板材料には、スパッタリング成膜中の200度程度の温度上昇に耐えられれば採用可能です。 通常は石英、ガラス、Si基板から選択します。また、成膜材料はスパッタリング成膜が可能な材料であれば自由に選ぶことが出来ます。

このような材料で構成されたフォトニック結晶に、更に最表層を平坦にする技術を開発したことで、 通常の多層膜と全く同じ取り扱いを可能にしました。

自己クローニングフォトニック結晶の特長

自己クローニングフォトニック結晶の最大の強みは、どのようなパターンの基板にも一度の成膜プロセスでフォトニック結晶を作りこむことができる点にあります。 ですから、ナノインプリント技術などで安価に基板を作成してしまえば、通常の光学多層膜と同じ装置で大量に製造することができます。 例えそれが、メガピクセル対応の超高集積素子であっても、です。

曲線で構成された基板上へも自己クローニング素子は作製できます。 こうすると、透過軸方位が徐々に変化する偏光子や、主軸方位が曲がった波長板など、従来技術では実現できなかった新しい光学素子が得られます。 これまでにない光学素子で新たなアプリケーションを生み出す、そんなシーズが自己クローニングフォトニック結晶です。